今回も、中小企業診断士の本業である決算分析の視点から、
いちごグリーンインフラ投資法人の決算をみていき、持続可能性を検討する。
1.損益計算書
損益を見ていく場合、売電収入は発電量により変動はするものの、大きな災害や
天候不順、設備トラブルがなければ大きく落ち込むことはないと思われる。
ざっと整理してみると以下のとおりである。
損益計算書 | |
営業収益 | 11.5億円 |
支払利息 | 0.6億円 |
創立費等償却費 | 0.3億円 |
当期純利益 | 2.1億円 |
(減価償却費) | 6.4億円 |
2.投資口でみて分配金の可能性について
これを投資口の総口数(102,966口)で割り収益をどのように分配するかの
原資であるFFO(当期純利益+減価償却費+その他償却費)でみると
1口当たりのFFO | 8,560円 |
このFFOをどのように分配しているかとみると
1口当たりの分配金 | 4,226円 |
1口当たりの借入金返済 | 4,147円 |
合計 | 8,373円 |
当たり前ではあるが、FFOを借入金の返済と分配金にほとんど当てている。
固定価格買取期間内については十分採算がとれる内容になっている。
3.固定価格買取制度が満了後の収益状況の予想
経済産業省は太陽光発電の大口の買取価格を8円に下げたいとの意欲をみせている
この前提をもとに、最悪の想定をした損益計算書は
固定価格買取満了後の損益計算書 | ||
営業収益 | 2.4億円 | 38.7円⇒8円へ下落予想 |
営業費用 | 1.9億円 | 減価償却費の下落 |
支払利息 | 0.0億円 | 借入金の完済 |
創立費等償却費 | 0.0億円 | 償却済 |
当期純利益 | 0.5億円 | |
(減価償却費) | 0.0億円 |
一応は利益がでる。
一方、投資家への分配を考えると
1口当たりのFFO | 453円 |
現状の20分の1まで落ちていくことになる
ここまでの想定になると、現状の高配当は難しいということになる。
4.まとめ
固定価格買取制度後の最悪の想定ということになると非常に厳しい状況になる
投資家への分配を考えると
(1)売電先を確保し、8円以上で売れる市場を持つことができるか
(2)減らないと想定したコスト(資産運用報酬など)を下げることができるか
(3)新規の効率的な太陽光パネル投資(更新及び新設)をして、高い収益水準
を確保できるか
の3点が大きな要素である。
特に売電価格と発電効率が大きな要因になるモデルのため、今後の発電市場の環境
と技術革新が重要になると思われる。